2021/12/21 13:07

 

かつては餃子が有名な町といえば、宇都宮や浜松が世間一般の認識でしたが、宮崎の餃子も年々注目を集めるようになっています。おそらく、口コミやメディアでの情報を見聞きして、宮崎餃子のことが気になり始めた人も少なくないのではないでしょうか。実際、統計上でも、宮崎市での餃子の購入頻度や支出統計は、全国トップを記録するなどその餃子熱の高まりは顕著です。本記事では、そうした宮崎餃子の魅力や特徴について、他の地域の餃子との比較も交えながら紹介していきます。

 

宮崎餃子とは?

 


 

宮崎で餃子文化が根付いていったのは戦後のことだといいます。当時、満州帰りの人々が中華料理屋を始めるようになり、宮崎県内の各地で餃子が普及していったようです。

そのため、餃子をウリにする老舗料理店が多いのはもちろん、餃子を持ち帰って家で焼いて食べるという習慣もここ宮崎ではお馴染みになっています。

 

手軽なお土産品としても人気が高く、冠婚葬祭で餃子を食べながら語らう光景も珍しくありません。そして今やこの文化を反映するかのように、(冒頭でも触れましたが)宮崎市では世帯当たりの餃子購入額や購入頻度で、宇都宮や浜松にも引けを取らずトップ争いを繰り広げています。

 

そうこう踏まえて宮崎餃子の特徴ですが、明確な定義が定まっているわけではありません。実際、餡の配合比率や焼き方はさまざまです。裏を返せば、それが特徴の一つともいえます。

地元産のお肉・野菜をベースに、各店舗間で独自の製法やアイディアが駆使された結果、どの宮崎餃子も実に個性的です。

 

強いて傾向を述べるならば、餡の具材には特産品として名高いキャベツをメインに使用するケースが多いかもしれません。また、お肉に関しては、豚だけにこだわりません。鶏肉を用いた逸品も数多くあります。

 

宮崎餃子の魅力や美味しさの理由

 


 

一筋縄ではいかない魅力にまさしく“包まれている”宮崎餃子。美味しさの秘訣を尋ねられれば、いくつもの要素が挙げられます。主なポイントは次の通りです。

 

快晴の恵みを授かり育つ野菜

 

宮崎は全国的にみて、日照時間の長さ、快晴日数の多さ、平均気温の高さで上位を誇るエリアです。恵まれた気候条件下で育った野菜が、餃子の美味しさの要となる餡に存分に使用されています。出色は、宮崎県内で生産量トップを記録する高鍋町産キャベツです。ヒマワリの緑肥によって健康的に育ち、厚みと甘味を有しています。この特性は、コクが強いお肉と合わさってもしっかりと風味を維持してくれるため、食べ応え十分です。

 

同様にニラも美味しさに一役買っています。露地栽培とハウス栽培によって通年体制で生産する宮崎のニラは、非常に栄養価の高いものです。

宮崎餃子はこうした鮮度の高い地元産のニラも餡によく使われています。スタミナ回復にもうってつけです。

 

畜産王国が誇る絶品お肉

 

宮崎の温暖な気候と豊かな自然は、農業のみならず畜産業にも多大な恩恵を与えています。「畜産王国みやざき」とも称される宮崎は、鹿児島に次ぐ全国2位の畜産県として知られるほどです。鶏・豚・牛といずれも盛んですが、なかでも指定生産者と指定業者が一貫して生産、管理、加工を担う宮崎ブランドポークは、宮崎餃子の美味しさをけん引する素材いっても過言ではありません。とりわけ同ブランドの代表格「まるみ豚」などはやわらかく旨味のあるお肉として評判です。適宜異なる部位を餡にミックスすれば飽きのこない味わいの完成。重用されるのも頷けます。

 

コクや旨味をもたらすラードで焼く製法

 

全店舗共通というわけではないですが、ラードを使って焼き上げるのも宮崎餃子ならではの手法といえるでしょう。ラード自体の持つコクが具材に折り重なることで、ダイナミックな味わいが醸造されるため、食べ応えにもつながります。

 

具体的な調理の手順について一例を挙げると、まずフライパンに餃子を並べ、お湯を投入して蒸し焼きにします。餃子に火が通り調味料などがよく染み込む状態になったなら、ここでラードを投入。その後は、フライパンを常にゆすりながら焼くことで、均等に美しい焼き色が付いた状態で仕上がります。

ラード効果でカリッとした食感が生まれるわけですが、加えて、素材の旨味や甘味もしっかり堪能できます。

 

歴史ある技術・ノウハウ

 

先述の通り、宮崎の餃子文化は、満州帰りの人々が手掛けた中華料理店から広がっていきました。そして今日、宮崎餃子の名店の多くが、2代・3代と続く老舗である点は、やはり無視できないでしょう。そう、宮崎餃子は、決して急に美味しくなったというわけではなく、昔から身近な逸品として親しまれ愛されてきたのです。そしてその経緯には、紛うことなく技術の伝承があります。

 

たとえば、季節ごとに変わる野菜の水分量やお肉固有の脂の付き方など考慮したうえで最適な配合を編み出さなければ、上質な餡に仕上げることはまず困難です。これができるのはまさに老舗の経験とノウハウがあってこそだといえます。生地の包み方や閉じ方一つをとっても同様です。

 

宮崎餃子には、一朝一夕では到底身につけることのできない連綿と続く職人の伝統的スキルが詰まっています。食べるたびについどこか懐かしさを覚えてしまうのも、おそらくそうした背景に起因しているのでしょう。

 

バリエーションが豊富!

 

宮崎餃子は、型や製法が特に定まっていない分、各店舗、切磋琢磨しながら独自の発想で個性的な餃子を提供しています。餡にバランスよく野菜が混ざったタイプや、にんにくやニラが強く主張する餃子、ラードによる揚げ餃子や良い塩加減で優しく味わえるスープ餃子……等々、各所でバリエーション豊かなメニューを楽しめます。

 

絶賛する声が多い宮崎餃子、他との違いは何だ!?

 


 

好評を博す宮崎餃子ですが、今の地位を確立するにはやはりオリジナリティが大きな要素であったはずです。では、宇都宮や浜松の餃子との違いは何だったのでしょうか。以下、それぞれの特徴について端的に述べていきます。

 

宇都宮餃子の特徴は?

 

宇都宮餃子は、皮は比較的厚めのものが多い傾向にあります。

また、餡に使用される野菜の比率が高い点も特徴です。とりわけ白菜がメインに使われているように思います。

 

タレは、醤油・酢・ラー油の組み合わせが一般的ですが、一部の通のあいだでは、酢だけで食べる習慣もあるようです。

 

浜松餃子の特徴は?

 

浜松餃子は、薄皮を比較的短時間で焼き上げます。肉の分量は多く、ジューシーな口当たりが特徴です。

 

焼き方・並べ方にもお馴染みのパターンが存在します。フライパン上に円形で並べるのが主流です。一方で、中央の空き部分にもやしを添えるケースも見受けられます。

 

タレに関しては、各店舗独自のものを作り出していることが多いです。

 

あらためて宮崎餃子の特徴は?

 

宮崎餃子が際立っている点は、すでに触れている通り、地元産のお肉や野菜を使用した素材の良さを生かした味わいです。これは、農業も畜産業も盛んで、良質な素材を比較的安価に調達できる宮崎だからこそ成り立つといえるでしょう。そのため、まずは何もつけずにそのまま食べるよう促すお店も少なくありません。そして実際のところ、タレなしでも美味しく味わえるから驚きです。

 

サイズ感は、やや小振りなタイプが目立ちます。ビールや白飯に合わせるのはもちろん、おやつ感覚でパクパクと食べ進めてしまう方も多いようです。

 

とにもかくにも宮崎餃子を召し上がれ!

 


 

素材の旨味が活きている、気軽に食べやすい、食感や調理法が個性豊か……等々、ここで挙げた代表的な特徴を頭に入れたら、次は実食するしかありません。体験してはじめてその魅力が分かるはずです。

 

現地の餃子店でいただくのはもちろん、餃子のお持ち帰り文化が根付く宮崎だからこそ、オンラインで注文して自宅で味わうこともおすすめします。

宮崎餃子の観光面での施策が本格的に始まったのは意外と近年、そう2020年頃のことですが、そこから一気に広く知られるようになった今、(宮崎餃子は)一部の餃子ファンや食通だけのものでは明らかになくなりました。全国各地でニーズが高まるなか、お取り寄せ、通販においては今後益々活況を呈することでしょう。

 

恵まれた自然で育つ食材と、この地で磨かれ継承され続けてきた技術と知恵。これらのハイブリッドで以て宮崎餃子は、“日本一”と形容しても決して差し支えないように思います。一口で味わえるのも贅沢の極みです。これまで食べたことの無い方は、拙稿を機にぜひ試してみてください。大げさではなく、そこには至福のグルメ体験が待っています。